最悪の事件ですよね こんなこと2度と会って欲しくないです
94年に少年グループが11日間で4人の命を奪った連続リンチ殺人事件は、10日の最高裁判決で3被告の死刑が確定する。事件から16年余。極刑を求めてきた遺族は法廷で涙ぐみ、被告の支援者は「最高裁に更生した姿を見てほしかった」とつぶやいた。【伊藤一郎、北村和巳】
午後3時、第1小法廷。長良川事件で殺害された江崎正史(まさふみ)さん(当時19歳)の父恭平さん(66)は、亡くなる1週間前の写真を胸に母テルミさん(65)と並んで傍聴席の最前列に座った。上告審に被告は出廷しない。「上告を棄却する」。判決の最後に主文が読み上げられると恭平さんは天を仰ぎ、裁判官に深く頭を下げ、テルミさんとともに涙をぬぐった。
元少年らは、正史さんと友人の2人を車で連れ回した理由を「自分たちを見て、笑ったように感じた」と語った。解放したら通報されると考えパイプでめった打ちにし、肌にたばこを押し付けて生死を確認したという。
恭平さんは1審から傍聴を続け「死刑以外の償いは正史を生き返らせることだけ」と考えてきた。判決後に会見。「望んでいた結果がやっと出た。正史も裁判長の言葉を聞いていたと思う」と語り、3被告について「犯した罪の重大さを悟ってほしい」と述べた。
1審で「主犯格」とされた愛知県一宮市生まれの男(35)は今月3日、名古屋拘置所で記者と面会し「取り返しのつかないことをしてしまった。悩み苦しみながら生きていくしかない」と話した。短髪で色白、丸顔。黒いトレーナー姿で現れ、終始穏やかな表情。最後に両手を組んで顔を伏せ、被害者遺族や自分の支援者に対する祈りの言葉を口にした。
男は生後2カ月で母と死別。養母から愛情を注がれず、小学3年時、担任教師に盗みの疑いをかけられ大人を信用できなくなった。非行を繰り返し少年院を行き来した揚げ句、事件に至った。
「拘置所でキリスト教を信仰し、周囲への愛情が驚くほど豊かになった」。13年前から面会を続ける名古屋市の60代女性は話す。「彼はどんな凶悪な事件を起こした人間でも更生できると証明してくれた。死刑にしなければいけないのか」
男は拘置所側の写真撮影を拒んだとして今月9日から懲罰で外部との面会を禁じられている。弁護人は判決後「少年の集団事件の特殊性や、更生可能性を積極的に見てほしかった」と語った。